一日の撮影が終って、夕方宿舎へ帰ってくると、大盛りのサシミが置いてありました。そのおいしそうなサシミ皿をみんな、様々の思いで眺め入りました。
「幻覚じゃないんだろうね。」
するとそこへ数人の漁師たちが酒を持って入ってきたのです。疑問はたちまち氷解、楽しい酒盛りの開宴です。こんなことがたびたび行われるようになりました。そんな翌日には、前夜の漁師の奥さんたちが野菜や芋を持ってきてくれました。私たちはロケ費が底をついたというのに、前にも増して優雅な食生活をおくることになったのです。ニガナを採集したり、魚釣りをする必要もなくなり、イザイホウのことだけを考えておればいいのです。もうこうなると外来の撮影班ではありません。神事にかかわる島人のようなものでした。
本祭が近づくと沢山の報道関係者、観光客が入ってきます。無遠慮にあちこち歩き回られたのでは、たまったものではありません。その前に、島の若者たちで、報道管制をしくことになりました。縄張りをして、立入禁止の紙をぶら下げるのです。
私たちも、ごく自然に島の若者たちと一緒に、立入禁止の張り紙をはって回りました。
祭の二・三日前から大勢の人々が入ってくるようになりました。島の外に働きに出ている島の人たち、報道関係者、学者や文化人、一般の観光客などで島は膨れ上がりました。
私たちは、そんな外来者とほとんど接触することなく、神事の進行にとけこんで行ったのです。 |
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